甲状腺ホルモンとその治療薬


甲状腺ホルモンとその治療薬

甲状腺ホルモンの範囲は、はっきりいうと出題頻度も低く、勉強する優先順位も低いと思います。まぁ、必要最低限のことをなんとなーく覚えて入れば国家試験は乗り切れるでしょう。ただ今回この分野を選択したのは、私自身がこの分野の専門の門前に勤めているので、是非、甲状腺疾患についての知識を深めて欲しいなという思いで書きます。もしかすると、甲状腺疾患治療薬が覚えやすくなったり、他の分野と繋がるきっかけになるかもしれません。なので今回は、国家試験に合格する勉強の目線と、薬剤師として臨床に出た時の目線でこの記事を書こうと思います。’’へぇ〜’’くらいのテンションで読んでいただければ光栄です!


甲状腺ホルモンについて

甲状腺ホルモンはアミノ酸系ホルモンで核内受容体ですね!
国家試験で覚えておくべき甲状腺ホルモン合成のポイントをざっとまとめると、
①TG(チログロブリン)と結合して生成
②そのためにTPO(甲状腺ペルオキシダーゼが必要)
③血中ではたんぱく質との結合型で存在
④作用部位では遊離型で存在→たんぱく質と結合した形では、分子量が大きすぎて細胞内に入れないから!

それから、作用の強さが、T3>T4であること。この理由として、ヒトの体内にある受容体のほとんどがT3を認識するものであるため。


 

上の記述は教科書通り、教科書プラスアルファといった内容で、まぁこの程度知っておけば生物や薬理関係は乗り切れるんじゃないでしょうか。あまり、ピンとこないので丸暗記になりがちですね。私も甲状腺疾患を詳しく勉強するまでは必要最低限の知識しか入れてなかったので、この範囲はあまり面白くありませんんでした。ただ、今からの記事を読んでもらった後、甲状腺疾患って奥が深いなぁと感じてもらえたらいいなと思いますし、一回読めばスんっと頭に入ってくると思います!
それでは、今からは、薬剤師目線でお話ししたいと思います。
上に記述してあるように、甲状腺ホルモンの原料となるのはヨウ素です。なので、甲状腺疾患治療中の方には極力ヨウ素の摂取を控えてもらうよう指導します。つまり、海藻類の摂取を制限してもらいます。特に、昆布はヨウ素を含む量がずば抜けて多いので、出汁は鰹ダシに変えてもらうことまで注意します。細かいですが、’’おでんの昆布巻きを食べただけで、甲状腺ホルモンの数値が悪化しました’’という例などたくさんあります。それから、うがい薬も、イソジンはヨウ素を含むので使用しないように伝えています。代わりに、アズレンスルホン酸(抗炎症作用)うがい液を用いてもらいます。とまあ、日常で摂取するごく微量だと思われる量でも、大きく治療の妨げになってくるんですね。実際に甲状腺機能低下症に用いられるレボチロキシンナトリウムの量の単位はμgなので、微量でもホルモンの担う威力の偉大さというのを感じます。

 

そもそも、甲状腺ホルモンって何をするホルモンなのか…って学生の時は考えもしませんでしたが…、簡単に言うと、’’基礎代謝を担っているホルモン’’と考えてもらったら分かりやすいんじゃないかなぁと思います。

例えば、バセドウ病。
有名なのは、メルセブルクの三徴候です。動機・頻脈・眼球突出…しかし眼球突出は日本人ではあまり見られないんですね。バセドウ病は’’甲状腺ホルモンが過剰になっている状態=代謝がめちゃめちゃ高い状態’’です。よく、患者さんにわかりやすく説明する例として、’’体は、常にマラソンをしている状態になってます’’とお話しします。これだとイメージが湧きやすいですね。発汗が止まらない、体重がⅠ日で2キロも落ちる…などその症状は様々ですが、全ては基礎代謝の亢進にあります。

 

その逆で、甲状腺機能低下症の場合は、基礎代謝が落ちている状態になります。例として、橋本病の病態では、粘液性水腫(むくみ)や中心性肥満など基礎代謝が落ちることによっておこる症状がでます。
特に日本人は島国であり魚介類の摂取が多いことから、ヨウ素の過剰摂取での甲状腺機能低下症(ヨウ素をたくさん取るので、体が’’甲状腺ホルモンを作るのをストップしてー!という機序でおこる)は多くみられるようです。何より、自覚症状に乏しい面もあるので、’’私はむくみやすい体質’’とか’’食べたらすぐ太る’’というのは意外と甲状腺ホルモンの機能の異常のせいだったというケースも多々あるようです。
どうやって甲状腺機能の異常に気づくのか…一番多いのは不妊治療中に、妊娠しにくい原因が甲状腺機能の低下だったと指摘されるようです。基礎代謝が低いと妊娠しにくい体質になります。だから、日本人の痩せすぎ問題も不妊の原因の一つになるんですね。なので私は、最近の筋トレ女子ブームも、やりすぎは良くないんじゃないかなぁと思ったりしています。女性は少しふくよかな方がいいと思うんですけどね…笑

 

話は脱線しましたが…国家試験の問題で万が一甲状腺ホルモンに関して問われた時は基礎代謝のアップダウンという表現で考えてみるとイメージが湧きやすくなると思います。
あとは、甲状腺機能亢進症=バセドウ病、甲状腺機能低下症=橋本病、という考えになっている人は訂正して下さい。バセドウ病や橋本病は自己抗体が陽性を示して初めて診断がなされます。機能が亢進していても抗体がなければバセドウ病ではありません。過去に、’’動悸、頻脈、発汗、’’といった症状を並べられ、更年期障害と引っ掛けてきた問題もありました。抗体の有無というのは問題を解く上でもキーワードかもしれません。問題文はしっかり隅々まで読みましょう。

さて、薬の話に戻します。甲状腺の薬って名前が似ていてよくわかりづらいですよね。
病態から考えると、わかりやすいかもしれませんが、甲状腺の機能が低下している人には甲状腺ホルモンを補充してあげます。それがレボチロキシンナトリウムやリオチロニンナトリウムに値します。甲状腺ホルモンを補充してあげることで基礎代謝の更新、上がりすぎている甲状腺刺激ホルモン(TSH)を下げる役目をしてくれます。ちなみに、妊娠希望の方のTSH目標は2.5U/μg以下に下げることです。これらの医薬品は、もともと体内にあるホルモンを補充するという面で妊婦さんでも、授乳中でも服用できるものになります。なので、あまり薬を飲みたくない患者さんにも、「’’お腹がすいたからご飯を食べる’’感覚で服用しましょう""」と指導しています。安心して飲める薬なんですね。ちなみに、リオチロニンナトリウムはT3製剤で作用が強いので、ほとんどレボチロキシンナトリウムが処方されています。
これで次に紹介する甲状腺機能亢進症の治療薬とはごちゃ混ぜにならないでしょう。

 

次は甲状腺機能亢進の治療に用いられる薬です。これらは先ほどの甲状腺ホルモンそのものを補充する、とは違って、甲状腺ホルモンの合成を阻害させるものになるので、妊婦に禁忌であったり、無顆粒球症や肝機能障害など体に負担をかけてしまうがための副作用が出てきます。特に無顆粒球症に関しては抑えておくべきは、初期症状である風邪様症状です。チアマゾールは特に、最初2週間は服用開始から血液検査は欠かせません。
強さでいうと、ヨウ化カリウム丸<プロピルチオウラシル<チアマゾールになります。妊婦さんでどうしても薬でコントロールしていく必要がある場合はプロピルチオウラシルが用いられています。ちなみに…この薬は、苦味が特徴的です。それから、甲状腺機能が亢進しているということは、心臓もバクバクしている状態なので、治療のはじめは動悸を訴える方が多いです。その時に用いられるのが選択的β遮断薬です。アルセノールやプロプラノロールが用いられますが、症状の改善とともに中止される方がほとんどです。いわゆる対症療法ですね。
バセドウ病で、中には甲状腺自体を手術で切除する方もいます。甲状腺がなくなると、甲状腺ホルモンは作られなくなってしまうので、レボチロキシンで補充していく治療に変わっていきます。

 

なかなか、詳しく書いていない範囲になりますし、甲状腺専門の門前なんて珍しいかもしれません。意外と、身近な疾患であるということ、触れないからこそ知っててほしいことを今回は書いてみました。国家試験の大きな得点源にはならないと思いますが、もしも、就職して甲状腺疾患に触れる機会があればまたじっくり読んでみてください。

 

ちなみに、レボチロキシンナトリウムはカフェインや制酸剤、鉄剤、酸化マグネシウムと服用すると、複合体を形成して吸収が弱くなるため効果が落ちます。4から5時間(Drによっては1から2時間)間隔をあけて摂取するよう指導をします。あとは、女性に多い疾患であることから、サプリメントを服用している人も多いもので、飲み合わせの問い合わせが殺到します。豆知識?ではないかもしれませんが、’’資生堂が販売している’サプリメントにヨウ素が含まれているものはない’’とかそういったことも現場に出ると知る機会がたくさん出てきます。

 

今回は臨床的な目線から少しでも、参考書に書いてある内容が頭に入りやすくなればいいなという感じで書きました。今から実習の人は是非活用してみてください。私もまだまだ勉強不足なのでこんなことあるよ!ってことがあれば是非コメント欄に書き込んでください!




この記事を書いた人

あやちゃむ

薬剤師2年目の社会人。
薬学生時代は何を勉強すればよいのかわからず、模索し、独自の勉強法を確立。そして薬剤師国家試験に一発で合格。
このブログでは受験するうえで身につけた、合格のための勉強法を参考書の単元ごとにまとめていきます。

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